「カピタン・アラトリステ」シリーズと映画「アラトリステ」の背景知識と翻訳裏話


by KATO Kosei Ph.D
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カテゴリ:翻訳作業( 57 )

Martin Luther

英語で近世ドイツの話を読んでいて、Martin Lutherという人名が出てきたので、あれ何で公民権運動の話がここに、と、一瞬考えてしまいました。

英語で読んでいるから、「まーてぃん るーさー」という音声日本語に変換しちゃうんですよねー自動的に。

日本語で世界史を学ぶ場合には、ここは「まるてぃん るたー」と読むのが一般的なわけですよ。

入学試験なんかでMartin Luther(1483-1546)のことを「マーティン・ルーサー」と答案に書いたら、ちゃんと正解扱いしてもらえるんでしょうか?

正解だよな?

あるいはMartin Luther King jr(1929-1968)のことを「マルティン・ルター・キング・ジュニア」と書いたらどうなるのかな?

正解ですよね?
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by waka_moana | 2016-04-28 17:52 | 翻訳作業

オランダの運河

お久しぶりです。3巻の訳語について二つほどご報告。

3巻で劇中のスペイン人たちが、彼らに敵対する勢力のことをオランダ人と呼び、彼らが戦っている地のことをしばしばオランダと呼んでいるのですが、実際にはまだスペインはネーデルラント連邦共和国の独立を認めていない時期なので、何でスペイン人がオランダゆーとるのという疑問は当然出てまいります。

私にもわからんです。

例えば冒頭の

「秋の夜が明けようとしている。じめじめとしたオランダの運河には、全くうんざりさせられる。」

これの原文は

”Voto a Dios que los canales holandeses son húmedos en los amaneceres de otoño.”

なんです。原文にオランダってあるんで、さすがにここを「ネーデルラントの運河」とは訳せなかったです。

ここだけ見ると、カルタヘナ連隊が展開しているのがホラント州だからcanales holandesesなのかもしれませんが、別の場所では「イングランドとオランダの連合軍」なんて話も出てくるので、うーむ、どうなんですかね。小説の体裁として、壮年期のイニゴが過去を振り返って語るという形になっているので、語り手であるイニゴの現在においてはオランダという国が成立しているから、ということかもしれません。

そしてこちらは、今更ですが完璧な翻訳ミスを発見したのでお詫び。3巻の3章です。

「とはいえ、我らがスピノラ将軍には目をかけられていたし、マドリードには強力な人脈を持っていた。彼は宮中伯領の戦い には上級曹長として従軍し戦功を上げ、フルーリュスの戦いでドン・エンリケ・モンソンがカルバリン砲 に片足を吹き飛ばされると、その後を継いでカルタヘナ歩兵連隊の指揮官となった人物である。」

原文はこちらになりますが・・・・

"Favorecido de nuestro general Spínola, con buenos valedores en Madrid, se había hecho una reputación como sargento mayor en la campaña del Palatinado, recibiendo el tercio de Cartagena después que a Don Enrique Monzón una bala de falconete le llevara una pierna en Fleurus. "

訳文で「上級曹長」とある部分、原文ではSargento Mayorですが、これは当時のスペイン陸軍の軍制では将官の階位の一つで、Captain General、Maestro de Campoに次ぐ階級だということを最近知りました。連隊の中で3番目ですかね。

当時は近現代とは将官のランクもかなり違うので、じゃあどう訳すかと言われると相当困るのですが、上からの序列で言えば少将、指揮下にある兵力の規模で言うと中佐くらいです。近現代で言えばね。

そのまま「サージェント・マジョール」と訳すかなあ・・・。

今も「アラトリステ」シリーズを読んでくださっている方というのは、レアだとは思いますが。あ、でも人材コンサルティングのクライアントの社長さんがこないだ読んでくれて「あれ、めちゃめちゃ手間かけとるな。手間かけすぎだわ(笑)」と笑っておられました。

小説の方を一緒に訳した方々とはもう連絡も取れなくなってしまったのですが、映画の方はですね、いまだに担当の方とは飲み友達です。うちのゼミ生たちの就活の際には色々と相談にも乗って下さいましたし、去年は高校の仲間の湾岸タワマンのベランダで東京湾花火大会を見物したんですが、声優さんたちと一緒に遊びに来てくれました。

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もう10年前ですか。もっと昔みたいな気がしますが。思い出深い仕事でした。

作者は早く8巻書いて下さい。
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by waka_moana | 2016-04-24 23:42 | 翻訳作業

脚本が届きました

 手元に英語版とスペイン語版の脚本、それとシノプシスが届きましたよ。

 さあて・・・・
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by waka_moana | 2009-01-29 13:22 | 翻訳作業
 先ほど(21時15分)に黒猫さんが現れて、パンフの見本5部を置いて去っていきました。東京では明日公開ですからね。さすがにもう出来てないとおかしいわけで、東宝ステラさんはきっちり期日に合わせて仕上げてきたということです。

 さて、今日は前祝いでスペインのワインを1本買って来て開けたのですが、さっきラベルを見ていて妙なことに気づきました。メルシャンが輸入した「フアン・フランシスコ・ソリス・レセルバ」という赤ワイン。カスティーリャ・ラ・マンチャ地方の銘醸地バルデペーニャ(行ったことあります)産です。メルシャンのウェブサイトにはこんな風に書かれています。

「 『フアン・フランシスコ・ソリス』は、18世紀にスペインの独立戦争の際、ナポレオンの軍隊と戦ったソリス家の先祖の名前にちなんで造られたワイン。後に彼はチャールズ4世からその活躍を認められ表彰されます。その際譲与された土地でワイン造りを始め、その情熱的で高品質なワインは現代まで受け継がれ、世界中で広く親しまれています。ティント、ブランコ、レセルバの3種で、レセルバは網掛けボトルでスペインの伝統感を表しています。」
http://www.mercian.co.jp/company/news/2004/0442.html

 ひっかかるのは「チャールズ4世からその活躍を認められ」という部分。チャールズというのはイギリス語の名前ですが、チャールズ4世なんて王様はイングランドにはいなかったはず。誰だこれ?

 1分くらい考えてしまいましたよ。これってつまりその、ナポレオン戦争時代のスペインの王様だった、カルロス4世のことじゃないですか。まったく。何でこんなバカな文章が生まれたのでしょうか? 多分これ、もとは英語の文章で、それを英語の勉強だけしてきた翻訳家が訳したんだと思います。西日の翻訳ならカルロスをチャールズにするなんてあり得ないですからね。

 これで思い出したのが、とある大学の某新設学部の話。そこはその昔、通訳者として大層活躍された方が発起人になって作った学部で、翻訳やら通訳やらの学術的研究や充実の語学研修を看板にしています。なんでも開設初年度の入試の倍率は40倍を超えたとか。ずいぶんと景気の良い話で結構なことなのですが、通訳業界については知りませんけれども、翻訳家を育てるという話であれば、高校を出たばかりの若者にいきなり翻訳論と語学(しかも喋りメインの)を中心とした教育を施すのはあまり良いやり方ではないと私は思います。

 カルロス4世をチャールズ4世と訳した翻訳家は、要するにヨーロッパの近代史も知らなければヨーロッパ人が他国の王や貴族の名前を自国語読みに変換していることも知らなかったわけです。例えばスペイン王カルロスCarlosはドイツ人にはカールKarl、イングランド人にはチャールズCharles、フランス人にはシャルルCharlesと呼ばれます。しかも連中はごく少ない名前を使い回しているので、神聖ローマ皇帝カールもイングランド王チャールズもフランス王シャルルもスペイン王カルロスもうじゃうじゃ居る。だから、本来この手の文章が出てきたら翻訳家は年代と国と事績を入念に確認して、どの国の誰の話なのかを見極め、カルロスかカールかチャールズかシャルルかを決めなければいかん。

 こういう知識は、語学だけやっていても身に付きません。翻訳論なんか多分何の役にも立ちません。地域研究も駄目。だってスペインのことだけ勉強していたってチャールズやシャルルの話は出てこないんだもん。

 この場合、理想的なのは歴史学をきちんと学んでいること。何度も書きますけど、翻訳の仕事は語学以外の部分の知識の厚みが勝負を分けます。別に歴史学を学ばないと翻訳家になれないと言いたいわけではありません。社会学でも地理学でも文化人類学でも良いでしょう。医学、工学、理学、薬学も非常に有用です。まずは何か一つ、伝統的な学問の基礎をきちんと身につけることが大事です。

 ただ、現状、日本の翻訳家の大半は語学しか出来ない人たちであることも事実です。さまざまな映画の字幕を見ていても、トリノをトゥーリンと訳してみたり(それは英語読みだ!)、レパントLepanto(固有名詞・地名)とレバンテlevante(一般名詞「東」)を取り違えてみたりと珍妙な訳の例は枚挙に暇がありません。それで通用してしまっている業界であるとも言えますし、カルロスがチャールズでもワインの味は変わらないだろうと言われればその通りなのですが・・・
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by waka_moana | 2008-12-12 22:21 | 翻訳作業

全作業終了

 私のところでは全ての作業が終わりました。多分予定通りに出るでしょう、5巻。全体のイメージとしては、そうですねえ、4巻+2巻かな。あと後半は殆どが雨の中で物語が展開していくので、絵的には3巻っぽいのかも。

 お話は面白いですよ、もちろん。前半に一見バラバラに起こった事件が、最後に概ね一本の糸で繋がる構成は、推理小説も書いているレベルテの旦那の腕の見せ所でしょうね。ただ当時の政治状況を知らないと、事件の全体図を推理するのは無理なんですけど。

 
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by waka_moana | 2007-09-15 11:59 | 翻訳作業

今日のネタ

 今日も面白い誤入力を発見しました。

「上等な二等のラバ」

 二等が上等だなんて、自動車整備士みたいですね(日本では普通乗用車の整備資格は二級整備士が最上級で、一級は大型の車や特殊な車の整備資格になる)。

 正解は? もちろん「上等な二頭のラバ」。私の所から送った原稿はちゃんと「上等な二頭のラバ」になっているのに、何故こんな(笑)。
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by waka_moana | 2007-09-04 10:29 | 翻訳作業

校正してまっせ

 先週末から初校に入ってます。今日発見した面白いネタを紹介しておきましょう。

「不振な本」

ケベード「カピタン…。どうやら○○は『アラトリステ』シリーズが日本ではてんで売れていないことを皮肉っているようだ。もちろん赤を入れておいたがな。」

 正しくは「不審な本」ですね、もちろん。こういうことをやっていると、サルダーニャ警部補にナイフでお尻を切り取られますことでしょう。
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by waka_moana | 2007-09-03 10:00 | 翻訳作業

終わりましたよ

 今日、5巻も全部終わりました。あとは校正作業を残すのみ。漸くこの儲からない仕事を上げることが出来て、胸を撫で下ろしています。

 次はお金になる仕事がしたいです。
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by waka_moana | 2007-08-30 17:43 | 翻訳作業

朝チュンでちょっと安心

 5巻10章に入ってます。いよいよイニゴくんが彼女と・・・のはずだったんですが、朝チュンだったので助かりました。エロ小説とかあまり読まないんで、そちら方面のボキャブラリーが足りてないんす。

 話変わって9月の21日・22日は京阪神に遠征します。仕事じゃなくて遊びです。その頃には当然5巻も全部終わってますしね。
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by waka_moana | 2007-08-18 23:28 | 翻訳作業

ファンのため。

 毎日暑い日が続きますな。今日から9章に入ってます。7時前には起きて、8時前には作業に取りかかってましたよ。なんたる勤勉さ。でもきっとお盆も休めないのでしょう・・・(涙)

 話変わってファンの話。うるさいんですよ最近。静かなのは起動してから数分間だけですよ。私自身は必要無くても、ファンのあまりのうるささにやむなく冷房を入れている今日この頃です。

 9章ではイニゴくんがオリバーレス伯公爵に口答えなんかしちゃってます。
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by waka_moana | 2007-08-08 10:13 | 翻訳作業