「カピタン・アラトリステ」シリーズと映画「アラトリステ」の背景知識と翻訳裏話


by KATO Kosei Ph.D
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カテゴリ:文化( 44 )

4巻の裏筋の裏筋

 4巻はもうあとは詩の部分を終わらせちゃうだけになりました。3巻までの詩の部分が、翻訳としてイマイチだという指摘をいただいておりますので、なんとか御納得いただけるようなものに出来るよう、工夫しております。

 さて。4巻。表の筋は冒険大活劇です。愛と勇気。笑いと涙。恋と裏切り。儲かった人と損こいた人。全部出てきます。

 では裏筋はといえば、以前に書きました通りロジスティクス、物流のお話です。でもそれだけじゃない。もう一つ大きなテーマが仕込んであるような気がしました。それは何かと申しますと、「国民国家」の問題です。

 「国民国家」。英語ではnation stateと書きます。手元の社会学事典によれば「国家が民族的まとまりをもつ地域に即して建設されるとき、それを国民国家と呼ぶ」とあります・・・が、これはあまり良い表現じゃないですね。それはむしろ民族国家。民族と国家が一致している国家のこと。だってそうでしょう。アメリカ合衆国のどこに民族的まとまりをもつ地域があるのかと申し上げるしかない。むしろ、国家がある領域内に住んでいる人々を全て「国民」として統合している(あるいはしようとしている)時、そういった国を指して国民国家と呼ぶのだと思いますな。

 解りづらいですね。つまりこういうことです。ある国家がある。その国家は自分の領土内に住んでいる人間を基本的には自分の国の国民と認識して、そのように扱う。住民登録してパスポートを発行して税金を取る。そして、国民には「うちの国の人間として」の自覚を持ち、それに相応しい振る舞いをするように求める。

 軽いところでは「国民はこの国家を愛しなさい」と要求する。きついとこへ行くと「国民は国家の為に死になさい」と要求する。これってそんなに昔からあった話じゃないんです。だって細かく分割された領土が代替わりの度に「あんた誰?」みたいな遠くの偉い人に相続されたりするわけですから。以前に書きましたが、国家権力の頂点にいる王様がバーの雇われママというか、雇われ社長みたいなもんだった。もっと大事だったのはキリスト教徒であるかどうかとか、さらに遡ればローマ帝国の市民であるかどうかとか。

 要するに国というものがそんなに重いもんじゃなかったんですねえ。

 そのローマ帝国が壊れて、キリスト教もカトリックとプロテスタントに分裂してバトルロイヤルをやっていたのが隊長の時代です。ようやく国民国家的なものが生まれようとしている時代。

 で、隊長はどうだったかというと、ご存じのように国家にも王様にもキリスト教にもさほど拘っていなかった。ざけんじゃねえよ、くらい思っていた。にもかかわらず、1巻でも3巻でも反乱には加わろうとしなかった。その理由は何故だったのかということが、いよいよ4巻の最後でひっそりと語られます。

 詳しい話はネタバレになるので書けませんし、また別の解釈もあるとは思うのですが、個人的にはチャーチルが民主主義について語った有名な言葉を本歌にして、国民国家と封建制の違いを隊長とフェリペ4世の関係を例にとって語っている。そんな気がしました。
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by waka_moana | 2007-01-26 23:30 | 文化
スペイン・マドリード在住でかとうの喧嘩友達、河野兵部さんの来日コンサートがあります。スペインに興味のある方、ギターの好きな方、ぜひいらしてください。ロビーでは、ワインサービ スもあります(^-^)

タイトル: Spanish Fantasy 河野兵部ギターコンサート
日時: 2007年2月5日(月)19:00開演
前売り 3500円 当日 4000円
場所: ルーテル市ヶ谷センターホール
東京都新宿区市谷砂土原町1-1
TEL: 03-3260-8621
http://www.the-lutheran.co.jp/
(市谷駅(JR・地下鉄有楽町線・南北線)より徒歩10分)

*詳細は下記をご覧ください
http://nsidea.com/fantasyweb.htm

曲目:
ファンタジア(L.バイス)/ソナタ ホ短調(D.スカルタティ)/ニ長調コンチェルト
(A.ビバルディ)/アレグロ-ラルゴ-アレグロ( 河野兵部編曲)/ブーレ(J.S.バッハ)/モーツアルトの「魔笛」の主題による変奏曲(F.ソル)/スペイン舞曲5番(E.グラナドス)/入り江のざわめき(I.アルベニス)/マラゲーニャ(I.アルベニス)/朱色の塔(I.アルベニス)/伝説(I.アルベニス)

*朗読表現「なみの会」河野司の朗読が入ります。

*ロビーでは、2005年の1月に急逝してしまった、スペインをこよなく愛したジャーナリスト、故・清水理惠さん(享年39歳)を偲んで、サラピパス・スペイン写真展「寝ても醒めてもエスパーニャ」を開催します。

お問い合せ・お申し込み(前売り券): TH企画
携帯:090-8309-2906 Fax:055-251-5463
E-mail:th@spafan.com
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by waka_moana | 2007-01-06 09:46 | 文化

『王の帰還』

 実家に「指輪」のDVDを全部置いて来てしまったので、なんだかえらく久しぶりにこの映画を見ております。チラ見です。HDに録画しておいて明日以降、書斎で自転車漕ぎながらゆっくり見るつもり。

 で、今、丁度セリエAのローマ対カリアリがハーフタイムになったので少し『王の帰還』を見たのですが、なんとも不思議な合戦をしておりますな。先ほどは重装騎兵がオークのロングボウ隊に騎兵突撃をかけていましたが、何故オークはロングボウ隊を裸のまま前線に出しているのか。密集した歩兵に長槍を持たせてロングボウ隊の前に置いておけば、敵の虎の子の重装騎兵隊は撤退するしか無かったと思うのですが。

 そして今またテレビを見たら、今度は同じ重装騎兵がオークの戦象部隊に突撃をしている・・・・・。そんな無茶な!! ああ、しかも総大将が護衛も無しで乱戦に参加してる・・・・。
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by waka_moana | 2006-12-26 22:23 | 文化

汚らしいおっさんが素敵

 2巻まででも大概、むさ苦しいオヤジが頻出して素晴らしかった本シリーズ。特に2巻中盤のアルケサル書記官の寝室の描写など白眉と言って良かったですね。似たような気色悪いシーンは4巻にもあります。どう考えてもレベルテの旦那はオヤジ好き。

 この3巻でも汚らしいおっさんは沢山出てきます。もう夢のようです。そこで、O内にこういう提案をしてみました。題してアンケート「ベスト男性キャラを選べ!」

 ノミネートキャラは以下。

・瞬間湯沸器大佐、ドン・ペドロ・デ・ラ・ダガ連隊長殿
・本音で勝負、クーロ・ガローテ兄
・カスティリアの一言主、セバスティアン・コポンス
・口喧嘩ならかかってこい、ドン・カルメロ・ブラガド中隊長
・フランドルに唐突に咲いた一輪の花、ハイメ・コレアス坊
・下請け社長の悲哀、ドン・アンブロシオ・スピノラ将軍閣下

 さて、アンケート実現するかな。私の一押しはガローテ兄です。マラテスタ師匠と甲乙付けがたい。
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by waka_moana | 2006-12-25 11:31 | 文化

「畜殺用の短刀」

 1巻で隊長が「霊魂の扉」に連れて行かれる際に、ブーツのふくらはぎんとこに隠し持って行った「畜殺用の短刀」ってどんなもんだという質問があったので、少し調べてみました。

 要するにヨーロッパのお肉屋さん用のナイフらしいです。

 おお、そういえばそんな季節だからついでに紹介しちゃるか。

 マタンサmatanza。スペインの伝統的な年中行事っす。村中総出でブタさんを潰して食べちゃうぞ大会。やっぱこういう時はブタさんなんすかね。ポリネシアのルアウ(ブタを地中に掘った土ガマで蒸し焼きにしてみんなで食べる大会)もブタさんだし。

 スペインのマタンサは通例、12月上旬に開催されます。冬に向けてスタミナつけて行くんですね。解体されたブタさんはハムになったりベーコンになったりと、色々な形で保存食になります。それからモルシージャというソーセージも作る。ブタさんの血で作るソーセージ。

 おそらく隊長が使っているのは、このマタンサに使うナイフだと思うんすよね。確証は無いですが。で、どんなナイフかというと、まああまり厳密な決まりは無いんですが、薄刃で片刃で両刃付けのナイフですね。言い換えると

・刀身は薄い
・刃は刀身の片側にしか付いていない
・刃先は刀身の両面から研いで刃が付けられている(洋包丁はたいがいこれですね)

 例えば日本で言う牛刀なんてのもマタンサに使うナイフでしょう。でもあれはさすがにふくらはぎに仕込むにはでかすぎる。

 全長は最大でも12インチ、多分10インチ、もしかしたら8インチ。そんなとこでしょう。今現在、肉屋さんや解体屋さん用として製造販売されている洋包丁でそれくらいのサイズだとこんな感じになります。

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by waka_moana | 2006-12-21 00:44 | 文化
 3巻の見本がO内のところに届いたそうです。そこから私んとこに転送されて来るので、最も早くて私が見本を見るのは明日。発売日が明後日ですから、フライングゲットの方(それだけの情熱を持っている読者が居ればの話だよね、という無粋な嫌がらせは無しよ)と殆ど変わらないですな(笑)。

 さて。思い起こせば1巻から既にピストルをぶっ放したり、仲間の短剣を拾ってマラテスタ師匠に突きかかったりと、大概のアーバン・ファイトは経験して来たイニゴくんですが、この3巻ではいよいよ本物の戦場を知ることになります。戦闘時もそうですが、戦闘が始まる前や終わった後にさえ、幾つもの人死にに関わって、彼の内面は変化していくのです。

 その彼の得物ですけれども、1巻では隊長の剣やピストルを運んでいるだけでした。2巻では短剣を拾いましたが、すぐに師匠に取り上げられて終了。しかし3巻では彼も自分の得物を携帯しています。短剣です。出世したなあ、おい。じゃあ4巻では何を持って出てくるのかは、さらなるお楽しみとして。

 イニゴくんがようやく手に入れた短剣、具体的にはどんなもんだったのでしょうか。ちょっと思い浮かべて下さい。想像付きますかね?

 例えば日本列島には中世以降、短刀とか脇差しという短い片手剣がありましたね。でも刀身長はあれよりも短いです。スペイン語ではdagaと書く。英語ではdagger。たしか「ロード・オブ・ザ・リングス」で隊長の友達が持っていたあれ・・・・「突っつき丸」でしたか・・・英語ではStingというあの刃物。あんな感じです。

 要するに両刃(刀身の両側に刃がつけてある)で刀身が湾曲していない短剣ですね。ランボーが持っていたような片刃のサバイバル・ナイフを想像しちゃ駄目ですよ。イニゴくんの3巻の相棒はこれ。ダガー。最初から最後まで同じ個体を使っていたのかどうかはよく分かりませんけどね。

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(これはまさに彼と同時代、17世紀初頭スペインのdagaのレプリカだそうです)

 ちなみに4巻でも彼の腰には常に短剣がぶら下がっているのですが、4巻では何故かこういう書き方をしてある。

daga de misericordia

 ダガ・デ・ミセリコルディア。「とどめの短剣」とか「慈悲の短剣」と訳します。本当です。戦場で助かる見込みの無い負傷兵にとどめを刺すのに多く用いられたからだそうです。
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by waka_moana | 2006-12-20 23:20 | 文化

マタンサの紹介

 ちょうどわかりやすい画像付きのページがあったのでどうぞ。

http://www.spainfood.jp/now/page.html

 
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by waka_moana | 2006-12-19 19:02 | 文化

ジョッキ飲みかよ!!

 作中で隊長を始めとするワイン好きの面々が、何かというと手に取っているもの。「ワイン壺」と訳しておりますが、何かイメージ湧きづらいですよね。でも対応する和語が無いんでしょうがないといえばしょうがないんです。英語ならもう少しイメージが湧くでしょうけれども、奴ら英語の世界に生きていませんから、出来るだけ訳語に英語由来の外来語を用いたくはない。「イメージ」とか「パターン」とか「バージョン」とか「テーブル」ですね。「トランプ」に関してはもう和語扱いで使っちゃってますけれども、これには「カード」とか「カルタ」というカタカナ語に別の意味が強く結びついているという事情もあります。

 さてその「ワイン壺」。英語ならこうなる。

jug

 ジャグ。ジャグでワインを飲む。多少はイメージが湧きますね。ちなみにジャグに対応するスペイン語はこれ。

jarra

 敢えてカタカナにすると「ハッラ」。ラは巻き舌ですよ。ハッラでビノを飲む。・・・・・・う~む。今ひとつピンと来ないか。とまあそんなわけで「ワイン壺でワインを飲む」になっとるのです。

 ところでそのハッラ。どんなものか少し探してみたら、要するにジョッキでした。陶製のジョッキ。こんな感じ。

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 多分、形は上、色合いや質感は下の画像が隊長の使っている「ワイン壺」に近いんじゃないかと・・・。
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by waka_moana | 2006-12-14 13:54 | 文化
 私のところでは現在、隊長とイニゴくんがセビージャ市内某所に潜入して、非常に興味深い宴席に参加しておるところであります。コンピュータ・ロールプレイングゲームで言えば中盤のターニングポイントになるイベントの真っ最中ってとこですかね。いや本当にね、映画にするなら4巻だけで作ればそれでちゃんとコンパクトに成立したと思いますよ。「パイレーツ・オブ・カリビアン」みたいなチャンバラ活劇がね。

 ストーリーはこんな感じです。遠い戦場から戻ってきた傭兵崩れとその荷物持ちの小僧が港に入った所でイベント発生。イベントで入手したメッセージに従って別の町に行くと、そこでまたイベント発生。この町で二つ三つイベントを消化したところでフラグ立てゲームが始まって、必要なフラグを立て終わると後半突入・・・・。う~む。本当に古き良きドラゴンクエストか幻想水滸伝かって感じですなあ。

 隊長とイニゴくんは現在はフラグ立てゲームの大詰めです。フラグを立てながら仲間を集めて後半に雪崩れ込む、その直前ね。とあるとんでも無い場所の奥深く、深夜密かに集合した裏社会の住人たちをナンパしに行っちゃってるところ。

 この闇の宴がまたやたら笑えるんですよ。黒いユーモアが満載でね。それで、この辺を訳していて気をつけているのは、彼らは近代人じゃないってことです。17世紀前半ですからね。「自由」も「平等」も「友愛」も無い。無いというとおかしいですが、今日的な意味でのこれらの概念は、彼らの住む世界には存在していないんです。これらの概念が確立されるのは180年後、フランス革命の時ですからね。ということは、フランス革命より後に出てきたマルクス主義も当然知らない。

 これは実は重要なんじゃないかと思っています。というのはですね、マルクス主義の基本的な歴史観は「階級闘争」だったんですよ。貴族、市民、労働者といたら、上の階級から順に下の階級に打倒されていくのが人類の歴史なんじゃと。それで最終的には労働者が社会を支配して「プロレタリア独裁」をやるというストーリーを考えていました。

 このストーリーを受け入れるならば、隊長もイニゴも彼らの悪友たちも全て一番下の階級にいるわけですから、王様や貴族や大商人というのは、打倒されるべき存在でしかないということになります。みんな「王様なんかイラネーヨ」「大商人は死ね」とか念じて日々を送っているはずです。

 ところが実際にはそうではなかった。少なくともマルクス主義が普及する19世紀末以前には、「王様や領主様は必要な存在であるから、きちんとした人が王様や領主様にならないと駄目なんだ(だからあんまり使えない奴は叩き出して別の奴を呼ぶぜ)」という考え方が当たり前だったんですね。面白いですねえ。私の知る限り、一介のド平民、流民みたいなところから出発して一代で天下を取った人ってヨーロッパの歴史には居なかったような気がします。フランス革命まではね。だいたいみなさん貴族豪族の出だった。羽柴秀吉や漢の武帝みたいな人は見当たらない。分を辨えていたんでしょうな。「政治は俺たちの仕事じゃねえぜ」みたいにね。

 語り手のイニゴくんには、特に国王陛下に対して尊敬語を使わせているのも、そういった判断からです。もちろんレベルテの旦那もその辺りは抜かりがありませんで、この闇の宴の章では、近代未満の平民たちはいかにもこんな感じだったんだろうなと思わせる、ヒネリの効いた台詞を色々と書いてくれてますよ。なるほどそう来たかという冴えた台詞が目白押しです。

 ちなみに私個人がこのシリーズの登場人物の中で唯一、近代人に思えるのは誰だと思いますか? グアダルメディーナ伯爵なんです。その理由は秘密。
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by waka_moana | 2006-12-09 00:22 | 文化

何かおかしいと思ったぜ

 現在は4巻5章をやっていますが、今日はまた妖しい箇所で思わず珍訳を見逃すところでした。

 今日のお題は「ヘラクレスの柱」。

 何だと思いますか? ちょっとググってみてくださいよ。そう、ジブラルタル海峡の雅名です。これはもともとギリシア神話に由来します。英雄ヘラクレスがエウリュステス王に課された12の難題の10番目のエピソードがネタ元です。

 ヘラクレスはイベリア半島にいるゲリュオンという三つ首の怪獣が飼っている牛を連れてくるよう言いつけられます。ヘラクレスはアフリカ大陸の北岸沿いにイベリア半島に向かいます。

 さて、ヘラクレスが世界の西の果てに来ると、そこにはかつてゼウスと戦って敗れ、天の西の縁を肩で支え続ける刑罰を受けた巨人アトラスのなれの果てがありました。巨人だけにその亡骸アトラス山脈も巨大でして、邪魔くさくて通れません。そこでヘラクレスは持っていたメイスでこの山を真っ二つに粉砕してしまいます。この時、ヘラクレスのメイスが叩きつけられた場所がジブラルタル海峡になり、アトラスの亡骸はジブラルタルの岩山とセウタのアチョ山になったとされます。後世の人々はこの二つの山を「ヘラクレスの柱」と呼んだのです。

 まあ、ヘラクレスの11番目の難事「ヘスペリデスの黄金の林檎を持ってくる」というエピソードではアトラスは何故か生きている(彼がアトラス山脈になったのはもっと後、ペルセウスがメデューサの生首を見せた時)という矛盾もあるんですが、それはまあ良いとしましょう。

 問題はですよ。イニゴくんが彼女に呼び出されてフラフラ出向くセビージャの町はずれに「ヘラクレスの柱」が突っ立っているなんて描写だ。そんなもんどう考えてもサイズおかしいやろ。え。ロック・オブ・ジブラルタルがセビージャの街中に置いてあるわけがない。

 おかしい。

 何だこれは。
 
 散々調べましたよ、ええ。正解はこういうことでした。セビージャの北側、マカレナ地区に「ヘラクレスの並木道(la Alameda de Hércules)」という有名な並木道があるんです。そうねえ、鎌倉の段葛みたいなもんですかね。16世紀中頃にバラハス伯爵なる人物が作ったそうで、その入り口には近所の古代ローマ遺跡から引っこ抜いて来た大理石の柱が2本立てられているんだそうです。そんでその柱頭にはそれぞれフリオ・セサルとヘラクレスの像が置いてある。だからその並木道を「ヘラクレスの並木道」と呼ぶんだと。

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 となると訳語「ヘラクレスの柱」はノーグッドです。ジブラルタル海峡を連想する人もいるでしょうからね。「ヘラクレスの像が置かれた石柱」に修正して、ここまで1時間。オポチュニティコスト激高っすな。

 あっ。もう一つトラップありました。「フリオ・セサル」ってパラグアイ代表のミッドフィールダーのことじゃないですからね。例によって有名人のスペイン語読み。塩野七生が萌えまくるあの人のことです。3巻ではスペイン語読みのままで出てきますから要注意。
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by waka_moana | 2006-11-28 16:46 | 文化