「カピタン・アラトリステ」シリーズと映画「アラトリステ」の背景知識と翻訳裏話


by KATO Kosei Ph.D
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 アラトリステとは全く無関係ですが。

 今日、見本が届きました。発売日は10/4だそうです。

ウィル・クセルク『星の航海術をもとめて:ホクレア号の33日』(青土社)

 ホクレア号とは、今もハワイの海を走り続けている伝説の大型帆走カヌーです。何故伝説なのかということを語るには非常に時間がかかるのですが、一言で言えば「最初のハワイ人がどこから渡ってきたのかという世界史上の大きな謎を解き明かし、ハワイのみならずポリネシア各地の先住民に誇りと自信を与えた」ということになります。

 この本は、ホクレア号がハワイ人のルーツを解き明かした伝説の航海を記録したノンフィクションです。映画でもこれほどドラマティックではないだろうというくらいに劇的な、奇跡の物語です。ハワイに少しでも興味がある方には、是非お読みいただきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

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 ちなみにそのホクレア号は、来年4月から5月にかけて、日本各地を訪問することになっています。こちらの記事をご覧ください。
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by waka_moana | 2006-09-29 10:00 | ごあいさつ
 我らが隊長の所属連隊といえば、世に聞こえた「カルタヘナ歩兵連隊(
El tercio de Cartagena)」が有名です。

 でも、何でカルタヘナなのか?
 
 今、カルタヘナというと最初に「ああ、あれね」となるのは、スペインではなくコロンビア共和国にある町の方。なんたって世界遺産ですからねえ。しかしもちろん、隊長が所属していたのは、ムルシア地方のカルタヘナの方でしょう。

 どうもこの「カルタヘナ歩兵連隊」というのは架空の部隊のようですし、どういった意味合いがあるのか色々考えてみたのですが、どうにもねえ。

 これ以外、私にはカルタヘナである理由が思いつかない。

「レベルテの旦那の生まれ故郷がカルタヘナだから。」
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by waka_moana | 2006-09-28 17:33 | うらよみ
 2巻でアラトリステ隊長とイニゴくんの師弟コンビを完膚無きまでに叩きのめしたアンヘリカ嬢の株(というのか?)が急上昇の気配です。

 たしかに強かったもんなあ。あの隊長が閉口して逃げ出したくらいで。3巻での隊長の鬼神も鼻白む脅威の強さを考えると、その隊長を撃退したアンヘリカはたしかに最強かも。

 なにか2巻では弱みを色々と披露してしまった隊長ですが、みなさん、3巻では逆に隊長の強さがこれでもかと言わんばかりに炸裂しますからね。隊長ファンにはたまらないですよ。1回、2回、3回くらい。「北斗の拳」のケンシロウみたいな隊長がね。多分レベルテの旦那は「北斗の拳」を読んではいないと思うんですが、「お前はもう死んでいる」的描写が・・・。
 
 といったところで、ブログ「熊つかい座」の火夜さんが素敵なアンヘリカ嬢の絵を描いてくださいました。

 こちら

 この目つき。怖っ。
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by waka_moana | 2006-09-27 01:34 | ごあいさつ
O内がそういうものを始めたようです。
こちらです。
http://su-casa-letra.hp.infoseek.co.jp/

ところでこの腰巻きのモーテン先生のお写真ですが、
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3巻は「日本語版1巻の裏表紙を持ってポーズを決めるモーテン先生」で行ってみたいものです。だめか?
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by waka_moana | 2006-09-26 09:14 | ごあいさつ

エラッタ

現在までに判明したミス

p106 3-4行目「両手剣」→「剣」

p269 7行目 「火刑情」→「火刑場」

p306 アルトゥーロ・ペレス=レベルテ→アルトゥーロ・ペレス・レベルテ

p309 「国王顧問会議」の直後の「v」を削除

p309 「死後、バルバセス侯の爵位を追贈された」→「なお1621年にロス・バルバセス侯爵の爵位を与えられた」

ついでに記念コピペ。まだ発送も始まってないのにありがたいこってす。

# 出版社: インロック (2006/10/2)
# ASIN: 4900405116
# サイズ (cm): 19 x 13
# Amazon.co.jp ランキング: 本で982位
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by waka_moana | 2006-09-25 16:21 | 翻訳作業

3年待てへんか

 酔いも醒めたので続きを書きます。

 「ラス・メニーナス」の中でこちらを見ているベラスケス先生。その胸には例のサンティアゴ騎士団の十字が燦然と輝いておりますね。彼が爵位貴族ではないスペイン人としては望みうるほぼ最高の栄誉の一つ、サンティアゴ騎士団団員となったのは1659年。

 ここであれっと思った方。あなたマークシート系のテスト強そうですね。

 そう。この絵が完成したのは1656年。彼がサンティアゴ騎士団団員になる3年前です。

 なななななんと大胆な! ベラスケス先生ったら、自分を勝手にサンティアゴ騎士団団員にしたのか?

 いくらなんでもそんなわきゃないですね。誰かがいつの間にかサンティアゴ騎士団の十字を描き足したんですよ。でも誰が? 犯人は? 

 犯人も決まっています。畏れ多くもフェリペ四世陛下の寵臣中の寵臣にして宮廷画家の最高峰であるベラスケスが描いた、王女殿下の絵に落書きをして、首と胴体が分割されないままな人物は一人しかおりません。フェリペ四世陛下ご自身です。

 つまりこういうことです。フェリペ四世陛下は1623年、つまり1巻の時点でベラスケスを国内最高の画家として評価し、数年後には、彼の描いたもの以外の自分の肖像画を全て撤去させてしまったほどでした。しかも彼は国王の身の回りを差配する官吏としても極めて有能で、最終的には最高のポストである王宮配室長にまでなった。

 しかし、そこまでフェリペ四世陛下に可愛がられており、しかもサンティアゴ騎士団団員の任命権はフェリペ四世陛下にあったにもかかわらず、ベラスケスをサンティアゴ騎士団団員にすることは非常に難しかったのですよ。何故ならばベラスケスはコンベルソの家系でしたから。

 ようやく彼がサンティアゴ騎士団団員となったのは、その最晩年のことでした。彼は1660年にはこの世を去っていますからね。フェリペ四世が「ラス・メニーナス」にサンティアゴ騎士団の十字を描き足したのも、ベラスケスへのせめてもの償いのつもりだったのかもしれません。

 え? コンベルソって何かって? それはもう、2巻を読んでいただくしかないですな。
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by waka_moana | 2006-09-24 08:55 | 王様たちのはなし

鏡よ鏡、鏡ちゃん

 2巻発売祭りってことで、とっときのネタをバンバン使います(だから買って褒めて・・・・)。

 今日のお題はこれ。ベラスケス作「ラス・メニーナス(女官たち)」。

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 ご存じ、プラド美術館の至宝。もちろん本シリーズの読者様は、隊長の時代のその土地が「牧草地(プラド)」と呼ばれるナンパスポットだってことはご存じですよね。隊長と警部補が遠い目をしていたのもここでしたっけ。

 この作品はベラスケスのキャリアでもかなり後の方の制作になります。完成が1656年。ロクロワの戦いで隊長が行方をくらましてから10年以上の後。

 画面の左の方で画布に向かってこちらを見つめているのがベラスケス先生その人ね。中央にいるのはフェリペ4世陛下の2番目の奥様である(つまり2巻の後半で出てくるあの奥さんではない)アウストリアのマリアナちゃんが生んだ女の子。マリガリータ王女。もう皆さんお忘れだと思うのでもう一度書きますが、アウストリアのマリアナちゃんは1巻でイングランドのチャールズ坊やがナンパに来たマリアナ王女の娘ですよ。

 画面奥の鏡に見えるのがそのイケナイ近親●●的夫婦です。妹の娘を娶ったシスコンのフェリペ4世くんとその嫁だ。つまり、この絵の情景を現地で見ておられたわけですな。イケナイ夫婦が。

 この絵は、この鏡の中のイケナイ夫婦の存在でも有名ですね。いや、禁断の色恋をテーマにした絵ならいくらでも西洋にはありましたから、そういう所で有名なわけではない。そうではなくて、この鏡の中に映ったイケナイ夫婦というのは、要するに「絵を鑑賞している人」の象徴なのですよ。おわかりでしょうか。わかるわけないですね。

 ここでいきなり翻訳家から美学の研究者としてのかとうに入れ替わる私です。現在でこそこういった作品というのは、作り手がいて作られたブツがあって、それを見る(聴く・触る・嗅ぐ・食べる)受け手がいるということを前提に論じられていますが、一枚の絵の中に「絵は描いた奴とブツとそれを見る奴で成立するもんだ」という構造を表現したものというのは、知られている限り西洋絵画ではこれが最初の一撃だったんですね。

 つまりこういうことです。ゲージツ作品というのは、それだけがポッと落ちていても意味を為さない。それは受け手によって受け止められて初めてゲージツ作品となり、ゲージツ作品としての意味が与えられる。これは20世紀以降の美学・芸術学の基本中の基本の考え方です。しかし、昔はそんなこと考えてなかったんですね。凄いものは神様がゲージツとして凄くしてるんだから、人間がいようがいまいが凄いんだと思っていた。なんせ神様っすから。うかつに反論しようものならボカネグラ御大に引っ張られてトレドの地下牢で魅惑の拷問フルコースっす。

 そういう考え方が毒抜きされて、ゲージツ作品ってのはそれを受け取る奴がいてはじめてゲージツ作品なんだって安心して言えるようになったのは、たかだかこの100年のことなんですねえ。

 ところがこのベラスケス先生、なんと17世紀の半ば頃に、既にゲージツ作品の本質の一端を捉えていたのではないか。この絵を見ていると、そんな妄想もふくらんで来るんですね、みなさん。だからこの絵は哲学的な絵だということになっている。

 ま、そんな難しいことを考えなくても、見ればわかりますか。この絵は凄いですよね。

 長くなったのでここで一旦、CM行きます。この絵の面白さは実はこれだけじゃないんだよ。2巻と併せて楽しめるネタがまだまだ隠れているのなのよ。ああ、酔ってるな俺。
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by waka_moana | 2006-09-23 20:27 | 文化
 今現在も2巻を手にしていない私ですが、2巻で出てくるキリスト教の習俗で、少しわかりにくいものがあるという電話が先ほどかかって来ました。

 要するにカトリックの信徒が死ぬ時にするあれ。あれは何で、何の為にするのかって話ですね。私の所を通過した時点では「終油の秘跡」という訳語になっていたと思いますが、もしかしたらその後「告解」に変更されているのかもしれません。

 ともかく、この辺りについて、簡単なご説明を。

 ちなみに簡単じゃないご説明はこうなりますが、

「終油の秘跡

 聖職者が聖油をキリスト教徒の肉体に塗布するという手順で行われる秘跡のこと。もともとは病人に対し、神の恵みを与えるという目的で行われていたが、中世から近世にかけては臨終にあるキリスト教徒に行うものという性格が強くなった。「終油の秘跡」という訳語はここから来ているが、1962年から1965年にかけて開催された第二バチカン公会議においてこの秘跡の位置づけは見直され、病人に対し行うという本来の性格に回帰した。よって現在では「病者の塗油」と呼ばれている。

 基本的な手順は以下の通りである。まず聖職者が秘跡を受けるものの額に聖油を塗り、「神がその愛と慈悲において、聖霊の恩寵をもってあなたを救いますように」と唱える。次に聖職者は秘跡を受けるものの両手に聖油を塗り、「神があなたの罪を赦し、またあなたを復活させますように」と唱える。これで秘跡を受けたものは神の恵みと罪の赦しを得るとされる。

 聖油(基本的にはオリーブ油を用いるが、これが手に入らない場合は他の植物性油を使用する)を用いるのは、危篤状態の人間に塗布するだけで儀式を行うことが出来るからである。すなわち意識がはっきりしている人間の場合、告解(聖職者に自分の犯した罪を告白し、赦しを受けるという手順の秘跡)などの秘跡によっても、「死の直前に罪の赦しを得る」という本来の目的は果たされるのである。」

 まあ何せ人死にが一杯出るお話ですからね。そこいら中でこういう需要はある。1巻でも「霊魂の扉」での戦闘でアラトリステがやっつけた男が実はかつての戦友で、イニゴくんに言って近所の教会から告解の為に司祭を呼ばせるというシーンがありましたな。

 簡単に言えばこういうことです。カトリックでは、人間は死後に天国か煉獄か地獄に行くことになっています。天国については説明不要でしょう。煉獄というのは、罪の償いを終えていない人が行くところです。ここで痛い目に遭って罪を償ってから天国に行くわけですね。ところが最後に秘跡を受けて罪を赦されてから死ぬまでにうっかり罪を犯すと、罪の赦しを受けずに死んでしまうことになるので、煉獄にも行けずに地獄行き直行便ご案内となる。

 そこで、臨終ギリギリのタイミングで罪の赦しを得て行こうという、考えようによっては少々セコい作戦が展開されるのですね。その赦しの為の秘跡は告解でもなんでも良いのですが、あまり引っ張り過ぎると喋ることも出来なくなる。そこで聖油を塗ってもらうだけで赦しが得られる「病者の塗油」がブームとなり、臨終のスタンダードとなった、ということです。
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by waka_moana | 2006-09-22 18:18 | 文化
 なんとまだ現物を見た翻訳者は一人もいないのですが、誤植を発見してしまった方、どうぞコメント欄でネジ込んでくださいまし。
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 どうか誤植がありませんように・・・・・ああ・・・・・・

 ちなみに今回の説明はこんな感じでした(紀ノ国屋書店ウェブサイトにあったものを加筆修正しつつ転載。)

「アラトリステは友人の詩人ケベードを通じ、修道院を襲うという、捕まれば死刑は免れられない危険な依頼を引き受ける。
若干13才のイニゴも加わった襲撃の準備は万端に見えたが、彼らを待ち受けていたのは異端審問所の罠であった。
運悪く異端審問所に捕まり、ボカネグラ神父の魔の手に落ちたイニゴ。
イニゴを救うために奔走するアラトリステとケベード。
様々な人々の思惑が渦巻く中、アラトリステはイニゴを救う事が出来るのか?
栄光と矛盾に満ちた17世紀のスペインを舞台に、多くの友情、信頼、信念と勇気を携えてアラトリステが生きる。」

現在のネット通販状況
紀ノ国屋 在庫有り
ヤフー 未入荷だが注文可
amazon 受注開始。送料無料。
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by waka_moana | 2006-09-21 20:26 | ごあいさつ
 私のとこでは3巻の作業がゴールイン直前です。

 結局、最初から最後まで戦闘戦闘ひたすら戦闘に明け暮れた巻でした。そしてイニゴくんの地獄巡りは今巻でも快調に続くと。

 ストーリーのわかりやすさという点では、2巻や1巻の方が上だとは思います。でも、この巻好きだなあ。

 (ここより先にもネタバレはありませんが、読む前に他の人の解釈に触れたく無い方は引き返してください)

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by waka_moana | 2006-09-21 01:05 | 翻訳作業