「カピタン・アラトリステ」シリーズと映画「アラトリステ」の背景知識と翻訳裏話


by KATO Kosei Ph.D
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図書館からの帰りに、山道を上りながら考えました。

社会制度についてのリテラシーというものが概念化出来ないかと。

何の話かと申しますと、例えばネット上のニュースについて付けられる一般大衆のコメントなどを拝読したときに、それは法律上ありえないだろうとか、制度上そんなとこが管轄してる案件じゃないぞそれとか、手続きに食われる時間やマンパワーのこと何も考えとらんなこいつとか、そういうね。世の中の基本的な仕組みを全く理解していないような発想、発言がわんさかあるんです。

法律があって行政マンの裁量があって手続きがあって、会社があれば社内に色々な部署があり命令系統があって、ビジネス案件であれば発注者がいて契約書があって権利関係があって・・・・・そういうことって、わかってる人にはわかってますよね。

何か新しいビジネスを立ち上げるんだったら、どこのお役所が規制や指導を担当してるんだとか、法律はどうなってるとか、どんな会社との新規取引が発生するとか、社内での決済はどう取るとか、契約書はどんな内容にするとか考えないと何も進みませんからね。

ところが世の中にはいい年をして、そういうことを一切考えられないおじさんおばさんが(!!)物凄い数で存在している。

以前に地元の里山紛争で出てきたおじさんおばさんたちがそうだったのですが、あれは特殊かと思っていたらいや全然そんなこと無かった。それでも、そんな人でもちゃんと人生やれてるのは凄いなあと思うと同時に、もうちょっと皆さん制度リテラシーがあったら、もうちょっと世の中まともなんじゃないかなあとも考えました。
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by waka_moana | 2016-05-31 18:37 | 余談
昨日読んだ論文

藤田幸一郎「18世紀ドイツの職人遍歴」一橋論叢、1991

中世から近世にかけての(現在の)ドイツでは、職人が親方になる前の段階として、修行した工房のある都市を出て各地を遍歴しながら、行く先々の工房で仕事をするという制度がありました。1箇所での仕事の期間は数ヶ月から、長くても1年。そうやって各地を巡りながら、縁あって親方になれた都市に根を下ろす。

これは、必ずそうしなければいけないという制度です。

イタリアやフランスやイングランドなど周辺の国では、職人は見習い、職人、(株に空きがあってそれを買う資金もあれば)親方という順序で、同じ都市で階梯を上昇するのが普通だったのですが、何故かドイツにだけは遍歴が制度によって強制されていました。

その理由は色々あって一つには絞りきれませんが、この論文では、労働力のバッファー機能を指摘しています。

職人修業を終えた人材の一定割合が常に国内の諸都市を循環しているので、職人の余った都市から職人の足りない都市への労働力の移動がスムーズに実現します。また、常にある割合で求職中の人材が発生するので、失業率は上がり、求人倍率は下がることになります。

その失業中の遍歴職人は、各都市の同業者組合、例えば印刷職人なら印刷職人組合に仕事を紹介してもらうか、求人が無い場合は当座の旅費を支給されて、次の都市へと向かう。

最後まで親方になれずに高齢化し、もう仕事はせずに組合からもらう旅費で旅を続けながら、死に場所を探すという職人も多かったようです。

この制度では、故郷を出た段階で親兄弟とはもう二度と会えないのが前提。運の良い人だけが故郷で親方株を手に入れて、親兄弟と暮らせたと。

詩的ではありますが、なかなかにハードな生き方でもありますね。現代のグローバル人材はどうでしょうか。遍歴職人と大して変わらない気も・・・・

さて、そろそろ怠け者モードの日々が終わりそうです。脳を働き者モードに切り替えなくては(´;ω;`)
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by waka_moana | 2016-05-17 08:49 | 余談
この春に立教大を卒業して外資系コンサルティング・ファームに入った教え子から、連絡がありました。

4年次後期に指導してもらった英文精読とライティングが、いきなり役に立っていますと。あれが無かったらどうなっていたかと思うと恐ろしいと。

ちなみにこれは大学の先生としてではなく(だってもう契約終了してるからね)、大学の先輩としてのボランディア指導です。毎週、ビジネスパーソンならば読めて然るべき記事を課題として出して、その要約を英文で提出させる。その要約を私が添削する。課題の誤読は無いか、英文法に間違いは無いか。

課題として出したのはBBCやWP、NYT、アルジャジーラ、あとカンバセーションも多かったですね。ARTSYも出したことあったかな?

とにかく彼女はそれを、卒業式の週まで毎週続けたわけです。卒業旅行中も旅先から送ってきた。

最初は青息吐息でしたけど、最後の方はホント別人のように進歩してましたよ。TOEICで800台後半くらいは行けるんじゃないかな。

そして、既に実務でそのスキルが役立っていると。

私からは、お仕事として英語を読む際に気をつけるべきことを2点、アドバイスしました。

単純で見慣れた単語に思いもよらない意味があったりする場合、そこを見落とすとその後の文章全体を読み間違ったりするので、「ここ、読めたような気がするけど何か腑に落ちないなあ」と感じたら、手間を惜しまずに辞書を確認すると良い。

教訓1:見慣れた単語にも思いもよらない意味がある罠

次に、外国の制度や職位については、辞書だけで済ませるよりは、その制度、その職位の概要を把握した上で読む方が深く読めるので、百科事典などを活用すると良い。

教訓その2:制度や仕組みそのものの知識を踏まえて読む方が安心・安全

これ、つまりは先日こちらに書きました、Sergent Mayorでやらかした奴です。彼女には正直に、かつて自分がプロとして手がけた仕事でこういう失敗をやらかして、もう取り返しがつかないままだと教えました。

失敗は取り返しがつきませんが、しかし次世代にそれを伝えることで、次世代を育てることは出来る。これで上級曹長も救われるでしょうか。
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by waka_moana | 2016-05-12 13:05 | 余談
サトクリフ『落日の剣』が以外な方向に面白いです。

舞台は5世紀のブリテン島南部。主人公アルトスは、一応はブリテン伯爵の爵位を持つケルト系の武将で、ローマ帝国軍が撤退していった後のブリタンニア属州(だったところ)を、サクソン人の侵入から防衛する為に東奔西走します。

いや、東奔西走どころか北へも南へも行きます。

その毎日が本当に大変そうなんですよ。

強力な重騎兵隊を組織するために、まずは南フランスの馬市まで行って種牡馬と繁殖牝馬を10頭ばかり買い付けてくるところから始まり、イギリス海峡を越えて馬たちを輸送するために既存の帆船の改造も手配すれば、そもそも馬の買い付けの資金調達もやります。

それが終われば既存の馬格の小さな馬で「負けない戦い」で凌ぎつつ、牧場で何年もかけて増やした馬格の良い馬を調教させ、悪い血統の馬は売って血統改良もして重騎兵のための馬を準備する。

軍団の中核となる騎士だけでなく、補助的兵科である弓兵や歩兵、医療スタッフのリクルートもする。

更には各地の領主との折衝、修道院や教会との調整、兵士の訓練と装備品の確保、手入れ。鎖帷子でさえ騎士団の人数分揃わないので、サクソン人の偉い人をなるべく打ちとって分捕るしかない世界。

いざ出陣となれば、何日間もかけて準備を整えますし、行軍したらしたで道に迷いかけたり泥濘に兵馬が足を取られて遅々として進まなかったり、補給物資を運ぶロバが崖から落ちたり・・・・。

駐屯地ではまたまた地元の世話人と交渉して食料や衣料品の入手と補充兵のリクルートに忙殺。これは何というか、巨大メーカーの不振事業部が新興勢力に押しまくられる中、なんとかして会社を生き延びさせようともがく、メチャメチャ有能だけどババ札引かされた子会社の社長・・・・。しかも連結子会社じゃなくなっちゃったよみたいなみたいな。

アラトリステの3巻に出てくるスピノラ将軍みたいだ。

実際のアーサー王ってこんな人生だったんだろうなあ。

それで姉には裏切られ、妻や腹心の部下は不倫?

なんちゅう人生だ。

こういうの読んじゃうと、あまたあるラノベファンタジー戦記は物足りなくなっちゃうなあ。

なお、史実ではローマが撤退した後のブリタンニア属州はあっという間にケルト系とサクソン系の小邦が乱立する巷となり、この状態が924年のアゼルスタン王によるイングランド統一まで500年間も続いたのでした。なんだかんだで統一国家って大事だよ。
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by waka_moana | 2016-05-06 16:34 | 余談