2巻のタイトル

 アマゾンの「出版社からのコメント」で知ったのですが、2巻のタイトルは『異教の血』だそうです。原題を直訳すると「血の純粋性」とかそんなような感じになるのですが、原題直訳系の邦題はどう工夫しても語呂が悪いので、なんとかならんものかとボカネグラ神父さまに相談したところ、アルケサル書記官さまからO内に圧力がかかったようです(嘘80.0%)。

 2巻はですね。作業していても本当に面白かったですよ。展開はダークでちょっと痛い描写もありますけどね。まあ宗教裁判ネタを扱ったにしてはグロを極限まで抑えてあって、著者の努力が伝わって来ます。その気になったらいくらでもグロがやれるテーマですからね。

 そして。2巻では私の一押しのグアルテリオ・マラテスタ先生が大活躍です。心優しき極悪人。特に(伏せ字)や(モザイク)と絡むシーンは倒れそうなくらい渋いんです。オリバーレス伯爵やアルケサル書記官、アンヘリカもそれぞれ見せ場貰ってますしね。アンヘリカのワルさもちょっと想像を超えていて、かの峰不二子も顔色無しですよ。ええ。

 2巻は8/25発売だそうです。今度こそ誤植追放。頼むよO内。
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# by waka_moana | 2006-07-07 20:36 | 翻訳作業

 1巻の作中で、最初は「バッキンガム侯爵」として登場していたジョージ・ヴィリヤーズが最後の方では「バッキンガム公爵」になっているのは何故、という質問を頂きました。

 実は作中でも触れられているのですが、彼はこのマドリッド滞在中に爵位が一つ上がって公爵になっているのです。
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# by waka_moana | 2006-07-06 20:39 | QandA

ヨーロッパの王室と領土

 このシリーズを読んでいて、戸惑う方も多いのではないかと思うのが、各国の王室と領土の関係です。例えば当時のスペイン王国は、ヨーロッパの中でもポルトガル、現在のオランダ及びベルギー、イタリア半島南部、シチリア島などを支配していました。

 それでは、スペイン王国はどうやってこれらの地域を手に入れたのでしょうか? 自慢の歩兵隊を送り込んで征服したのか? 違うんです。これは特に当時のスペイン王家・・・・ハプスブルグ家の得意技だったのですが、各地の有力な家と婚姻関係を結ぶことで、これらの家の領地を吸収していったのですね。もちろん所領を継承する際に紛争になることもありましたが、そこは自慢の軍事力が物を言うわけです。

 それでは、そういった言わば落下傘で降りてきたような支配者を、領民はどう思っていたのでしょうか? どうも、あまり気にしていなかったのではないかと言われています。これについては上手い言い方がありまして「ヨーロッパの王様というのはバーの雇われママのようなもの」なのだそうです。

 私はバーというところに出入りした経験がないので詳しいところは知りませんけれども、要するに「きちんとした仕事をしてくれれば、前歴は問わない」ということのようですね。誰だったかなあ。司馬遼太郎さんか堀田善衛さん、どちらかの言い方だったと思うんですけどね。

 さて。「スペインというバーのママ」がハプスブルグ家に切り替わったのは1516年のことでした。それ以前のママはトラスタマラ家という家で、この家の人がカスティリア王国とアラゴン王国を別々に持っていたのですが、アラゴン王のフェルナンド2世とカスティリア女王のイサベル1世が結婚した時に王位をまとめて、スペイン王位が誕生します。ところがこのバー「スペイン」のママはフェルナンドとイサベルの夫婦が初代、彼らの娘ファナ(狂女王)が二代目をやって、そこでトラスタマラの家名を継ぐ人材がいなくなってしまったのです。というのは、ファナは神聖ローマ皇帝の息子フィリップ(美男公)と結婚していましたし、ファナ以外のトラスタマラ王家の直系は死に絶えてしまっていたのですよ。なんてこと。

 結局、フィリップとファナの息子カール・フォン・ハプスブルグがスペイン王位を継承してスペイン王カルロス1世(しかも神聖ローマ皇帝位も継承してカール5世)となります。バーのママの名字がトラスタマラからハプスブルグになったわけです。それどころかこのカルロス君、スペイン語をしゃべることも出来なかったといいますが、きちんとした仕事をしてくれれば問題無しだったのですねそれでも。

 ちなみにカルロス1世、ちゃんと仕事をしたのか? とりあえず彼はスペイン王位以外にも両手に余るくらいの門地を継承していたので、スペイン王としての仕事に専念することは出来ませんでしたし、重税を課したり故郷のフランドル人を重用したりしたので、カスティリアの貴族の反乱などもあったのですが、これはなんとかねじ伏せた。おいおい。いきなり喧嘩かよ。

 が、最低限の仕事はしたようです。つまりスペイン生まれスペイン育ちでスペイン語を喋るスペイン王を残した。

 これがフェリペ2世。ご存じスペイン王国の最盛期を築き上げた絶対君主です。
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# by waka_moana | 2006-07-06 19:32 | 王様たちのはなし

 「カピタン・アラトリステ」シリーズは、著者ペレス=レベルテの趣味を反映して、蘊蓄満載、しばしば話の本筋から離れて暴走を始めるという、なかなか楽しい作りになっています(それが魅力の一部でもあります)。そして、ヨーロッパ近代史の知識があると、このシリーズの読書の楽しさは数割り増しになると思います。

 そこで、このページでは、「カピタン・アラトリステ」シリーズの読書のお伴として、ちょっとした背景知識をご紹介していきたいと思います。
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# by waka_moana | 2006-07-06 19:31 | ごあいさつ

 既にインターネット上の各所でご指摘いただいておりますが、先日発売されましたアルトゥーロ・ペレス・レベルテ著『アラトリステ』の中に誤植が見つかりました。可及的速やかに版元のイン・ロック社に連絡し、正誤表を挿入していただけるようお願いしますが、既にお買い上げいただいた方の為、取り急ぎ訂正箇所を以下に示します。ご迷惑をおかけして誠に申し訳ありませんが、翻訳者一同、「カピタン・アラトリステ」シリーズの魅力を日本の皆様に堪能していただけるよう、なお一層精進致しますので、どうかご寛恕いただけますよう伏してお願い申し上げます。

訂正箇所

263ページ最終行と264ページ1行目の間には、以下の文章が入ります。

指を一本高く上げ、たった今何かを思い出したかのようにして、伯爵は机の上にある紙の中か

すなわち、この部分の文章は以下のようになります。

「も、もちろんでございます」たどたどしく言った。

 指を一本高く上げ、たった今何かを思い出したかのようにして、伯爵は机の上にある紙の中から書類を一枚取り出すと、国王秘書官に手渡した。

「そなた自身がこの特別手当を処理してくれると、おそらく我々も安心できるのだが。それはドン・アンブロシオ・スピノラ自身が署名しているもので、フランドルでの働きの報酬としてドン・ディエゴ・アラトリステに対し四エスクードを支払うようにというものである。これで、しばらくの間彼は、生活のために剣を振り回す時間を多少なりとも節約できるだろう…。おわかりか」


264ページ最終行の以下の文章は、削除してください。

「もしそんなことをしておれば、今頃そなたは死んでおるわ。もしくは将来そうなるか」

すなわち、この部分の文章は以下のようになります。

「閣下にご説明いただくよう、お願いしてはおりません」

「もしそんなことをしておれば、今頃そなたは死んでおるわ。もしくは将来そうなるか」

 沈黙が訪れた。伯爵は立ち上がって窓の方へと向かった。外は雨が降りそうな雲行きだった。伯爵は手を後ろで組み、中庭の衛兵の移動を見つめていた。逆光の中、その姿はさらにがっしりとして、暗く見えた。


巻末に記された翻訳者名は、以下のように修正してください。

加藤晃正→加藤晃生

※以上の誤植訂正箇所の公表は、以下の諸権利に基づくものです。

(氏名表示権)「著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際 し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする」

(同一性保持権)「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする」

(引用)「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」
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# by waka_moana | 2006-07-01 00:09 | ごあいさつ